2017-08-30

多汗症の新薬としての可能性

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暑い夏ももう少しですかね。当院も多汗症の診療に力を入れていることもあり、夏は連日汗でお悩みの患者さんに来院いただいています。

今日は気になる文献をみつけたので紹介したいと思います。イスラエルの大学チームが行った多汗症患者さんに対しての新規外用薬の研究です。医学論文には色々あり、対象が細胞を対象とした実験や、動物を対象とした実験、そして人に対しての臨床研究などがあります。また、人に対しての研究なども研究のデザインにより、その論文が実際に診療の中で実用可能なのかということなど信頼度(エビデンスレベルといいます)が決まってきます。

今回はoxybutyninという、既存の成分の外用薬を多汗症の患者さんに対して1日2回、4週間塗ってもらって効果をみた研究です。そして研究としては1例報告や、症例比較といった研究デザインよりもエビデンスレベルが高いランダム化二重盲検試験という方法を用いて解析を行っています。結果としては53人の患者さんが治療を完了し、74%の患者さんにおいて発汗量の改善や、症状の改善を自覚されたとのことで、副作用は重大なものは皆無でありました。とのことです。

oxybutyninを成分とする内服薬は日本では、抗コリン作用を有するため頻尿・過活性膀胱治療薬として一般診療で使用されています。このような薬が将来的に多汗症の患者さんにも有効性が認められていく可能性を感じます。選択肢が増えるほど、患者さんには朗報になることは間違いないです。

詳細の論文はフリーでダウンロード可能です。ご興味がある方はぜひご覧ください。

http://www.medicaljournals.se/acta/content/abstract/10.2340/00015555-2731

 

夏のみならず、1年を通して汗で悩む人は多くおられます。当院でも現在において安全性と有効性が広く確認されている(エビデンスレベルのある)治療内容を揃えて診療にあたっています。

多汗症の診療は、いままでもこれからもライフワークとして取り組んでいきたいと思います。

院長 藤本智子