2020-11-25

原発性腋窩多汗症の新薬エクロック®ゲル5%が発売されます

2020年11月26日、世界に先駆けて、本邦初のソフピロニウムを主成分とした原発性腋窩多汗症の、塗る!治療薬、その名も エクロック®ゲル が処方できるようになります👏👏👏

実はワタクシこの外用薬、2015年くらいからでしょうか、開発に関わらせていただいておりました。日本で行った治験場所にも、ふくろう皮膚科クリニックが含まれまして、来院された患者さんも参加していただいております。あれから数年かけて見事、安全性と有効性が証明されこのたび日本で新しい外用薬が誕生しました!

今までなかなか多汗症の治療が普及しなかった大きな理由の一つが、どこでも処方できる薬がなかなかなくて、先生方も治療したくてもできなかった‼というものでしたので、保険適用で、処方箋で薬局でもらえる外用薬がでたということは、非常にインパクトがあります。患者さんたちも、腋窩多汗症でお困りの方がおられたら、まず近所のクリニックや診療所で治療ができる時代になりましたヽ(^o^)丿

2020東京支部 ランチョン エクロック®ゲル

少しずつ多汗症の認知度は高まってきているのを感じていますが、これから一気に診療できる場所が全国の保険診療をする医療機関になったことで、汗で日常生活に支障がでている、自分の力を発揮できないと感じている人はぜひ相談をしていただけたらと思います。これからこの薬に関連した講演会が多く続きますが、多汗症の理解が深まっていくように伝えられること、これからも行っていきたいと思います。                  院長  藤本智子

2020-07-19

② チョイス で語られなかったこと 多汗症患者さんたちの声

今回、Eテレチョイス@病気になったとき「多過ぎる汗の悩み」 の取材の際、事前の打ち合わせでお願いしたことがありました。

藤本:多汗症の治療選択肢のチョイスの中に、`あえて治療をしない’ というチョイスも含められませんか?と。

これは、長年診療をする中で多くの患者さん達とお話しし、治療を提供し、少しでも汗の悩みを解決していくという立場から提示するというのは、一見全く逆であり、とんでもない!とお叱りを受けるかもしれません。今日はそのことについて少し掘り下げておハナシをしていきたいと思います(長いです。長すぎますが・・・よろしくおねがいします)。

私が多汗症をはじめてみたのは2005年の東京医科歯科大学の発汗異常外来という専門外来をはじめてからとなります。当時は患者さんを目の前にするものの、その悩みも初めて聞くものですし、圧倒的な経験不足の前にどう向き合ったらいいのか自らも悩みながらの診療でした。汗で日常生活がしにくくなることはもちろんですが、さらにみなさんを苦しめていることは、`親しい人にも打ち明けられない’`悩みを共有できる人がいない’という孤独感でした。

これは、まず多汗症という状態で困っている人が沢山いることを認知してもらうことが必要ではないか。そんな中で、ふくろう皮膚科を開業した当初、休日のクリニックで、少人数で多汗症の患者さん達と話し合いの機会を何回かもつことができました。そこでは、診察室の短い時間では聞くことができなかった多くの悩みを参加者と共有できました。中でも私の心に強く残った言葉は、`ピアノの先生に汗が多いので何とかしなさいと言われてトラウマになった。親にも理解できないので、誰にも話すことができなかった。このように同じことで苦しんでいる人と話を共有できてよかった。小さくて悩んでいる子供のころに、こんな風に汗のことを相談できたり共有できるような場があったらよかった。’というお話でした。

それから3年、多汗症で悩んでいる人たちがSNSやツイッターなどで自分の経験をお話したり、共有するために集まったりする場があるんだよということを診察室で患者さんから聞くことがちょくちょくありましたが、実際にお会いして共感した方2人、ご紹介します。

一人は守矢奈央さん、彼女は掌蹠多汗症であることを公表し、ご自分で多汗症の人が生活しやすい靴下などの製品を作ったり(athe)する傍ら、多汗症の人とのコミュニティーを開く場を提供したいと活動されています。去年の発汗学会で、専門家の学会の中、果敢にも学生の時に研究された研究結果をもって発表された姿に感銘しました(例えると、アマゾンの希少部族の中にカメラマンとして乗り込む、くらいの勇気がいります👏ふつうできませんね)。twitter.com/nao_athe?fbclid=IwAR2lx4Rt3booJuqvAguwhX0tv9iQTJD4Yf2wRIboW3WwBR_EncK7aVCpnrY

 

もう一人は本間洸貴さん。彼は掌蹠多汗症でご自身も掌蹠多汗症で悩まれて、14歳の時に胸部交感神経遮断術(ETS)を受けられ、その後も手術の副作用である代償性発汗と向き合いながらフリーランスで映像制作の仕事をされています。多汗症のことで悩みに悩んできた彼は、クラウドファンディングで多くの人から応援され、ドキュメンタリームービーを作成するに至りました。彼とは、映像の作成する過程で私の論文引用の掲載許可申請の時に丁寧なお手紙をクリニックあてでいただいたことで知り合いになりました。

このような出会いの中で、多汗症が認知されていくことで悩みを他の人にも理解してもらい、多汗症という状態を個性と受け止めて前向きに治療をしないという選択肢も、立派なチョイスなのではないか。と思ったのでした。結果的には、今回のEテレチョイスの番組としては、治療のチョイスという趣旨があるため、今回は治療しない選択肢については見送られることになりました。この場で、お二人がやっている活動を紹介させていただきたいと思います。

患者さんの会も不定期開催で行っているとのこと、これからも当院でも開催時にはお知らせをリンクしたいと思います。

最後に、とはいえ、これから多汗症の治療方法については、これだけ多くの困っている人がいるのです。新しい治療が今後でてきて、チョイスの数が増えてくると思います。そのことについてはまたの機会で取り上げていきたいと思います!

 

上 守矢奈央ちゃんと、2019年発汗学会で初対面 ‼ 

下 Voice上映会+患者会 2019年冬。本間洸貴さんと守矢奈央さん開催にお邪魔させていただきました。名古屋から参加された方もおられました。みなさんツイッターなどで、お知り合いだったようで、〇〇で書き込んでいます。おおー、あなたがそうでしたか。と、初対面と思えない出会いを見せていただきました。

 

院長  藤本 智子

2020-07-19

①2020年7月25日放送 Eテレチョイス@病気になったとき「多過ぎる汗の悩み」 

2020年07月25日 午後8:00 ~ 午後8:45 (45分)
チョイス@病気になったとき「多過ぎる汗の悩み」に出演をします。汗でお悩みの時のチョイス、丁寧に保険診療でできること中心に取材いただきました。

これも、多汗という状態が非常に生活の支障がでる状態であること、それに対しての対策が自分で選べるようになってきたこと、その一つの選択肢、チョイスが医療機関でできることが広く伝わってきたのだと本当にうれしい限りです。多汗で困る人は、やはり都市型の生活(電車通勤・通学)で、対面で人と人との関わりがあるような職業(学生さん・営業職・制服を着用するような業種)、場面(プレゼン・発表の時、人と手をつなぐ、会食をするなど)で困っています。逆に、コロナでリモートワークが進み、人との距離感が今後変わってくるような状態になってくると、逆に困らなくなるようになることもあるかもしれません。

出演してくださった方々はみなさん、当院におかかりの方です!東京医科歯科大学の皮膚科の専門外来からの長年の方もおられます。自分が長く悩んだ症状で受診するのも勇気がいるのに、さらに取材を受けるというその決心には、「多汗のことで人知れず悩んでいる人の力になりたい」という思いがありました。

番組取材スタッフの方々、打ち合わせからとても丁寧に取材をいただいたので、永久保存版な内容となっています。ぜひお楽しみに!

司会は八嶋智人さん、大和田美帆さんです。日々ご活躍なタレントさんですが、多汗症のことについて本当に関心をもっていただきました。

収録後は、おなじみチョイス‼ポーズを一緒にしてもらってとても嬉しかったです(((o(*゚▽゚*)o)))

院長   藤本 智子

 

2019-06-10

原発性局所多汗症 取材記事から 治療の仕方、向き合い方

しばらくぶりの更新となります。

多汗症の患者さんはふくろう皮膚科クリニック、多くいらっしゃいます。みなさんクリニックにくるまでの日常生活はかなり障害されていて、毎日の生活で非常に困って来院される方ばかりです。治療について、一人一人診察室でお話しさせてもらっていますが、今回全般的な治療についてよくまとめていただきました取材記事となります。診療でお話しをしている内容を盛り込んでいただきましたので、受診できなくて困れられている方にもみていただきたいと思いました。

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なぜ多汗症になったのか、その回答をお答えできる確たる原因についてはいまだ解明されてはいません。しかし多汗であることに対しての治療はここ10年くらいでようやく少し広まってきていて、潜在的な患者さんは非常に多くおられることから、現在治療の開発も少しずつ進んできています。これからの10年後には、もっと多様な治療ができるようになるのではないでしょうか。

多汗症と共に生き、楽しんで生活ができるような付き合い方について、今後も深く考えて関わっていきたいと思います。

院長 藤本 智子

2019-01-15

読売新聞 ‘からだの質問箱’ 2019年1月11日 質問に回答の記事を載せていただきました

読売新聞 2019.1.11  からだの質問箱

2019年、新年あけましておめでとうございます。

今年は‘読売新聞の‘からだの質問箱’ の回答が仕事始めとなりました。ご質問の方、どこに相談しようか(病院なのか友人なのか・・・)と悩まれたと思います。

真っ白のタオルに石鹸をたっぷりつけて、首の後ろや背中をごしごしする。くーーーっと、めちゃくちゃ気持ちいい瞬間ですね。しかし白いタオルはこすると茶色くなる。このようなご経験、みなさんあるのではないでしょうか。。。。。もちろん私もあります。

皮膚の外側部分は表皮が細胞分裂を常に繰り返していて、不要になった細胞は垢となって自然に外に排出される構造です。その垢をごしごしタオルでこすると茶色くなるというのは正常な現症です。ただ、垢が不要なものかというとそうではありません。からだの外側と内側の間にあって、バリア機能の役割を担っています。その垢のバリアを不自然にとってしまうと、湿度の低い冬などはとたんに乾燥してしまうことになってしまうのは想像しやすいと思います。ふくろう皮膚科では、お子さんからご高齢の方まで、この季節はやはり乾燥肌が多くいらっしゃいます。(朝出勤するとクリニック内の湿度は20%台!ですから。乾燥対策に、クリニックに着いて真っ先に加湿器を付けるのが私の日課です。)

その中でも目立つのは、女性の顔の乾燥肌です。

起床時洗顔、保湿してから化粧下地、ファンデーション、アイメイクをして仕事へ。

帰宅したらクレンジングでメイクを落として眼の周囲は特別アイメイク用のクレンジングを使う場合も。その後洗顔してまた保湿する。

女性の顔は‘落として洗ってつけて落として’といった日常が繰り返されます。これでは自然な皮脂も取れて、皮膚が非常に薄くなり、結果的に顔の敏感肌症状になる方は非常に多いです。来院された患者さんには顔に使用するものをシンプルにして、‘ぜひ、面(ツラ)の皮を厚くしてください!’とお話しさせてもらっています。

垢(あか)には大切な役割があり、取りすぎないようにしよう! というお話でした。

今年もふくろう皮膚科にてお悩みに真摯に診療をさせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

   院長  藤本智子